能は、神社や寺院へ奉納される舞踊を元とし、古くは猿楽の能と呼ばれました。民衆の芸能として親しまれていた猿楽は、室町時代になると、世阿弥を代表とする能役者によって、“幽玄”なる世界をあらわす芸能へと洗練されていきます。簡潔な形で人間の本質を表現する能は、戦国時代の武将たちに愛好され、江戸時代に武家の式楽に定められるまでになりました。
能は、江戸時代を通して様々な儀礼のなかで盛んに演じられました。近世の武家社会では能は必修の教養であり、大名たちは各々の屋敷に演能の場を設け、面や装束などの能道具一式を調えました。柳川藩11万石の藩主であった立花家も、例外ではありません。
本展示では、立花家史料館に残された伝来史料のなかから、豪華な能装束や、幽玄な能面を中心に紹介し、柳川藩主立花家の能の様子を伝えます。
立花家三代と安東省菴の関係を、立花家・古文書館の所蔵する史料をもとに紹介します。