春は花の季節です。梅の香りに春のおとずれを知り、次第に蕾がふくらんでくる花々に心が浮き立ちます。桜が満開になると、誰もが心おどらせ、各所で花見の宴がひらかれることでしょう。
本展示では、立花家史料館が所蔵する5千点の美術工芸品のなかから、花の美しさを描いた絵画や能装束、様々な技法で花の姿をあらわした工芸品、華やかな宴を彩っていた酒器類と茶弁当をあつめました。展示室での贅沢なお花見の宴をお楽しみください。
また、「柳川の雛祭りさげもんめぐり」の季節に花を添えられるよう、花に喩えられる女性の美しさを描いた絵画や、姫さまたちの華やかな婚礼調度もあわせてご紹介します。
1 春のおとずれ 花の季節 | ||
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春を告げる香高いウメにつづき、タンポポ、サクラ、フジが、絵画や能装束、やきもの、漆工品なかで咲きほこっています。梅といえば天神さま(菅原道真)。太宰府天満宮の境内には、「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と詠われ、京都から一夜にして飛んできたと伝えられる御神木「飛梅」が、今年も花を咲かせています。 | ||
名称 | 制作年代 | 作者 |
梅形風鎮 | 近代 | |
梅図 | 江戸時代初期 | 画 松花堂昭乗 賛 澤庵宗彭・江月宗玩 |
朱泥松竹梅水注 | 中国・清時代 | - |
紫泥貼花梅鳥文茶入 | 中国・清時代 | - |
梅図 | 明治時代以降 | 賛 三条実美 |
梅屋敷蒔絵盃 | 江戸時代末期〜明治時代 | 高龍斎 |
天神名号「南無天満大自在天神」 | 江戸時代初期 | 狩野探幽 |
萌葱地桐笹蒲公英模様舞衣 | 江戸時代後期 | - |
黒漆地桜に唐草文蒔絵文箱 | 江戸時代後期 | - |
木地桜樹文文箱 | 江戸時代末期〜明治時代 | - |
染付青海波に桜と藤文大鉢 | 江戸時代後期 | - |
黒紅地松藤文縫箔 | 江戸時代後期 | - |
2 花らんまん-立花家伝来の茶道具から- | ||
立花家に伝来した茶道具と煎茶道具は、どれも大名の格にふさわしい名品ばかり。数々の伝来品のなかから見つけた「花」をご紹介します。 | ||
名称 | 制作年代 | 作者 |
赤織部茶碗 | 江戸時代初期 | - |
色絵藤桜槌車図水指 | 江戸時代初期 | - |
色絵花文急須・煎茶碗 | 明治時代以降 | - |
白磁陽刻牡丹文香合 | 中国・明時代 | - |
3 花の顔 美人をえがく | ||
江戸時代後期に活躍した江戸の絵師・谷文晁は人気が高く、多くの大名家も彼の絵を求めました。立花家には、中国・唐時代の服飾をまとう六美人を描いた、二幅対の「唐婦人図」をはじめ四点が伝来しています。また、柳川藩の国学者・西原晁樹が、中国の神話上の女神を唐風の美人になぞらえて描いた「西王母図」には、九代柳川藩主・鑑賢の漢詩が添えられています。 | ||
名称 | 制作年代 | 作者 |
唐婦人図 | 文政8年(1825) | 谷文晁 |
西王母図 | 文化2年(1805) | 画 西原晁樹 賛 立花鑑賢 |
4 花の盃 宗茂ゆかりの盃 | ||
初代柳川藩主・宗茂の代より、立花家の祝宴では必ず、朱漆塗に金蒔絵の五組盃が出されれたといわれます。二条院讃岐の和歌「沖の石」の情景を描く一升三合(約二.三ℓ)入を最大に、「梅に誰袖」、「野々宮」、「杜若に蛍」、「網代に千鳥」と、華やかで雅な画題がならびます。宗茂が五盃三升九合(約七ℓ)を傾けて「少しホコホコする」と言ったという話も共に伝えられてきました。 | ||
名称 | 制作年代 | 作者 |
沖の石図蒔絵組盃 | 江戸時代中期〜後期 | - |
木地桜図蒔絵盃 | 江戸時代後期 | 壽鶴斎英舟 |
唐婦人図 | 江戸時代後期 | 壽鶴斎英舟 |
5 花見の宴 晴峩の桜 | ||
梅沢晴峩は、江戸時代後期に柳川藩の御用をつとめた絵師です。江戸幕府の奥絵師であった江戸木挽町狩野家九代・晴川院養信のもとで絵を学びました。晴峩の描く、穏やかで洗練された満開の桜の絵を前に、藤や酒好きの妖精・猩々をあらわした提重、田安徳川家の姫が輿入れ時に持参した葵紋入の茶弁当等を広げて、贅沢な花見の宴をお楽しみください。 | ||
名称 | 制作年代 | 作者 |
桜形風鎮 | 近代 | - |
富岳図 | 江戸時代後期 | 梅沢晴峩 |
茶弁当 | 江戸時代後期 | - |
瀧に桜図 | 江戸時代後期 | 梅沢晴峩 |
猩々形貝尽し文蒔絵提重 | 江戸時代初期〜中期 | - |
山桜図 | 江戸時代後期 | 梅沢晴峩 |
朱漆藤図蒔絵提重 | 明治時代以降 | - |
6 大名道具の華 姫さまの婚礼調度 | ||
白綸子に刺繍した打掛、鼈甲の笄、懐紙を束ねる銀製の胴締と、姫さまの愛用品は花ざかり。化粧道具はもちろん、教養の高さを示す文房具や香道具は、大揃いであつらえられた婚礼調度の一部です。七代藩主正室・清姫は福岡藩黒田家から、十二代藩主正室・純姫は御三卿田安徳川家から、実家の家紋入の華やかな蒔絵の調度とともに、立花家に輿入れしてきました。 | ||
名称 | 制作年代 | 所用者 |
朱地藤に蝶模様袱紗 | 江戸時代後期 | |
萌葱地蝶に藤金具胴締 | 江戸時代末期〜明治時代 | |
萌葱地桜金具胴締 | 江戸時代末期〜明治時代 | |
藤棚に蝶鼈甲花笄飾 | 江戸時代後期 | |
白綸子地網目に四季花束模様打掛 | 江戸時代後期 | 12代藩主立花鑑寛室 純姫 |
唐草葵紋蒔絵料紙箱 | 江戸時代後期 | 12代藩主立花鑑寛室 純姫 |
唐草葵紋蒔絵硯箱 | 江戸時代後期 | 12代藩主立花鑑寛室 純姫 |
牡丹唐草藤巴紋蒔絵香炉台 | 江戸時代中期 | 7代藩主立花鑑通室 清姫 |
黒漆塗葵紋散蒔絵旅眉作箱 | 江戸時代後期 | 12代藩主立花鑑寛室 純姫 |