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金銀に輝く壁紙にひそむ新旧の技術

2023/1/31

平成28~31年(2016-2019)の修復工事では、経年により変色した「大広間」の壁紙を、新旧の技術で再現して張り替えました。

作業はすべて、今では失われつつある、京都の職人さん【株式会社 丸二】の技によります。

旧壁紙のはぎとり

2016年8月
旧壁紙の内側(残念ながら重要な文書は出ませんでした)

旧壁紙の調査

蛍光X線分析を主とした調査の結果、 黒ずんでいた菱形文様は、真鍮(銅+亜鉛)による金色と銀の2色刷と判明しました。経年により、銀は黒色に、真鍮は銅が緑青化して緑がかった褐色に見えていたのです。

2016年9月 福岡市埋蔵文化センターにて

組子の修理

2017年3月

壁紙の下張り

可能なかぎり旧来の手法を踏襲しましたが、下張りは反故紙を利用せず、新たな和紙を、厚さや糊付けを変えて七重に貼り重ねた上に、本紙を上張りしました。

張り方によって糊の濃度も変えます

①骨縛り 
厚めの楮紙と濃いめの糊により、組子の暴れと型くずれを防ぐ
②胴張り
虫害や変色につよく、燃えにくい緑色の名塩和紙(雁皮に泥土をまぜた和紙)により、骨が透けて見えるのを防ぐ
③田の字簑
少し濃いめの糊を田の字につけ、緩衝となる空気層をつくる
④簑縛り
楮紙を押さえつけ、壁面化させる
⑤浮け
楮紙により通気のための層をつくり、下地の灰汁を通さない
⑥ 二重浮け
⑦浮け縛り
茶色の機械漉和紙(混入物がない、のびが少ない)により、下が透けず皺がでない

2017年4月 ①骨縛り
2017年5月 手前から白・②緑・⑦茶色の和紙が張られています

壁紙の本紙上張り

本紙は越前の手漉き和紙です。
和紙を漉くための枠「漉きぶね」も、「大広間」壁紙のサイズに合わせ、通常の襖のサイズよりも大きくなっています。

福井県越前市 やなせ和紙(http://washicco.jp)にて

金銀2色の文様はスクリーン印刷。
顔料は変色しにくい、雲母と酸化チタンからつくられる顔料を用いています。

福井県越前市 前田加工所にて
福井県越前市 前田加工所にて

丈夫な越前の手すき和紙に、新技術で刷られた輝きが、100年後まで変わらずに続いていくはずです。ただし、新しい技術なので、まだ100年の実績を誰も確かめてはいないのですが……



壁紙が張り替えられた「大広間」は、とても明るく軽やかで、修復前とは印象がガラリと変わりました。

2017年6月 畳を敷く前 四分一も見えますか?
100年前の輝きをとりもどした「大広間」

株)御花は、この「大広間」を結婚披露宴の会場としても活用しています。
金銀でおめでたく、華やかな宴にピッタリ。

会場設営の一例 御花ブライダルギャラリー」より


100年前の建築当初には予想もしなかったはずなのに、先見の明でしょうか……

しかし、明るさと軽やかさのヒミツは壁紙だけではありません。




【立花伯爵邸たてもの内緒話】
明治43年(1910)に新築お披露目された立花伯爵邸の、内緒にしている訳ではないのに知られていない、声を大にして宣伝したい見どころを紹介します。
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