初代柳川藩主・立花宗茂はいつから“西国無双”となったのか
2025/2/6
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近年、“西国無双”という誉め言葉とともに紹介される場面がとても増えた、 初代柳川藩主・立花宗茂。
“西国無双” =「西日本に並ぶものがないほどすぐれている」と褒められているのでしょうが、戦国ご当地大名たちは「みんなちがって、みんないい」(by 金子みすゞ) という意味では、誰もが “無双” なのではないでしょうか。
なぜ殊更、立花宗茂が “西国無双” なのでしょう?
いまのところ、立花宗茂が “西国無双” とはじめて称されたのは、修史家の岡谷繁実が192人に及ぶ武将たちのエピソードを記した『名将言行録』[明治2年(1869)初版刊行]だと推測されます。
該当箇所を引用します。
(天正)十八年二月朔日、諸大名伺候シケル時、[豊臣]秀吉[徳川]家康ニ問テ曰、今度ノ上京ニ本多平八[本多忠勝]ヲ召具セラレタルヤト云 折節今日是ニまかりあり候とて、御前ニ召出サル、秀吉[立花]宗茂ヲ召シ、彼レこそ東国ニ隠レ無キ本多平八ト云者なり、宗茂ハ西国無双ノ誉レ有レハ、向後心ヲ通シテ、宗茂ハ西国ニ守護シテ、いよいよ忠を尽クシ、平八ハ家康ヲたすケテ東国ノ守護スベシ、東西ニ於テ無双ノ者ナレハ、我前ニ於テ対面ヲ許スト云ハレケレハ……
岡谷繁実 『名将言行録』巻之27 「立花宗茂」1869 玉山堂
※旧字体は新字体に、難読漢字の読みは平仮名に変換しました。
岡谷繁実『名将言行録』巻之27・28,玉山堂,明2(1869) /「立花宗茂」3-32コマ
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『名将言行録』 のこの場面は、天正18年(1590)2月1日と明記されています。
実際は、豊臣秀吉による後北条氏攻めの先鋒が出陣した日らしいのですが、諸大名が一堂に会する場面はなかったのではないでしょうか。
立花宗茂と本多忠勝とが「無双」と称せられる場面は、真田増誉が集録した『明良洪範』にも描かれていますが、すこし様子が異なります。
徳川氏と関連のある武将や家臣の事績を中心に収録される『明良洪範』の成立は、『名将言行録』より150年ほど遡るとみられているので、こちらが元となるのでしょう。
○ [豊臣] 秀吉公島津を征伐有て帰陣の後 立花宗茂を殊の外賞美せられ 若年なれども武勇は西国にて一人也と度々申出さる 神君[徳川家康] 御上京有し時 本多忠勝を召連られしやと有しに 御供の由申させ給へば 則召出され立花と引合せられ 両人東西にて無双の勇士天下の能固め也と賞せらる……
真田増誉『明良洪範』続篇巻之五 1912 国書刊行会
真田増誉『明良洪範 : 25巻 続篇15巻』,国書刊行会,1912.
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実は、豊臣秀吉が立花宗茂を「武勇は西国にて一人也」的に褒める話は、現存する史料で確認できます。
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しかし、この書状での誉め言葉は「九州之一物」。
わたしたちは史料に則した「九州之一物」をアピールしていきたいのですが、「西国無双」のキャッチ―さに負けている感は否めません。
ところで、「九州の一物」のくだりは『名将言行録』にも書かれています。
岡谷繁実が参考文献として『立花戦功録』を挙げているので、そちらが反映されたのでしょうか。
⇒『名将言行録 巻之1』「名将言行録引用書目」
⇒安東省菴著『立花戦功録』⇒ 筑波大学附属図書館蔵「立花戦功録/附高麗記」(国文学研究資料館 国書データベースより)
(天正十四年八月)二十五日高鳥井ノ城ニ押寄セ、半時ばかリカ内ニ攻破リ、星野兄弟ヲ打取リタリ、秀吉書ヲ賜ハリ其功ヲ賞セラル、又黒田宮木安国寺ヘ賜ハリシ書ニハ、立花ハ九州第一ノ者トソ仰下サル……
岡谷繁実 『名将言行録』巻之27 「立花宗茂」1869 玉山堂 7コマ
※旧字体は新字体に、難読漢字の読みは平仮名に変換しました。
ここまで『名将言行録』や『明良洪範』のエピソードを拾ってきましたが、描かれている宗茂はどこまで実像に近いのでしょうか?
そして、現時点での”立花宗茂”研究では、どのくらいのことが判明しているのでしょうか?
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