立花宗茂vs北原白秋 福岡柳川のレジェンドはどっち?
2025/9/2実は、ほんの10年ほど前まで、初代柳川藩主・立花宗茂の知名度は、今ほど高くありませんでした。
柳川のレジェンドといえば、柳川市出身の“詩聖”北原白秋[1885–1942]。
毎年、1月25日の《白秋生誕祭》では、白秋の母校の小学生たちが白秋の童謡を演奏しながらパレードし、 行灯が浮かぶ掘割を舟で進む幻想的な《白秋祭水上パレード》 は、白秋の命日11月2日をはさんだ3夜にわたります。
とくに白秋の没後10年から続く《白秋祭水上パレード》では、市民の方々が白秋の童謡や歌曲が演奏したり、郷土芸能を披露したりと堀岸からあたたかく舟を歓迎する様子が郷愁を誘います。舟上の人々は、フィナーレの打上花火を見上げながら白秋を偲ぶのです。 ➡️ 柳川市観光公式サイト『第73回「白秋祭水上パレード」開催について』
写真は柳川市HP›観光特設トップ›MOVIE・Photo›柳川写真館より
観光はもちろん「白秋推し」で、立花家史料館の存在も忘れられがちでした。
西鉄柳川駅を降りると、まず目に入る歓迎看板もご覧の通り。
「歓迎 北原白秋のふるさと水郷柳川」と、白秋先生の独壇場です。
宗茂ファンからの「立花宗茂のライバルは誰?」という質問に、つい「北原白秋」と答えたくなるほど、僻んでいた日々もありました。
しかし、ありがたいことに、立花宗茂の知名度は徐々に高まりつつあります。
ゲームの影響で宗茂の正室・誾千代が先行して有名になったことは否めませんが、小説や漫画も大きな後押しとなりました。
※それぞれの内容の詳細 は『書名』🔗 から ➡️
そして2017年、柳川市の主導で「立花宗茂と誾千代」NHK大河ドラマ招致委員会が発足、招致活動が本格的に始まりました。
パンフレットの配布やグッズ制作、メディアでのPRや講演会など、多彩な取り組みを通して「宗茂と誾千代」の魅力が発信されています。
立花家史料館にいると、こうした地道な積み重ねのおかげで、宗茂の知名度が確実に高まっていることが実感されます。
とはいえ、白秋先生もさるもの。
2015年、北原白秋の詩歌にたびたび詠まれた柳川の水辺の景観が、 近代日本を代表する詩人の詩作の源泉であると評価され、「水郷柳河(すいきょうやながわ)」の名で国の名勝に指定されました。 ➡️ 柳川市HP「水郷柳河」
右2枚の写真は柳川市HP›観光特設トップ›MOVIE・Photo›柳川写真館より
「水郷柳河」をあえて「すいきょう」と読ませ、「柳河」と書くのは、著作のなかで白秋自身が用いた表記を、そのまま踏襲しているからです。
さすが、国民的詩人!
この「水郷柳河」🔗 は、近代文学者の創作と地域景観が直結した“文学的風景”として国の名勝に指定された、きわめて稀な事例です。
現在、国の名勝は394件ありますが、文学的評価を主因とするのは、「水郷柳河」と宮沢賢治[1896-1933]の作品の源泉として岩手県内7か所の自然景観が指定された「イーハトーブの風景地」🔗 ぐらいではないでしょうか。
……さすが、 “詩聖”北原白秋!
―そうです!
戦国武将・立花宗茂と、近代詩人・北原白秋。
柳川の2大レジェンドがすべきは、対決ではなく共闘!
宗茂が築いた柳川藩11万石の歴史のもとに白秋が生まれ、そのすべてを抱える柳川の風景が白秋の詩情を育んだのです。
実際に街を歩くだけでも、柳川藩主立花家の歴史と白秋の詩情を、肌で感じることができます。
そして今年、2025年は白秋先生の生誕140年という節目の年。
柳川市でもさまざまな記念イベントが開催されています。
➡️ 柳川市HP「北原白秋生誕140年記念事業」
柳川の2大レジェンドを、もっともっとアピールをしていかねば!
……それでも、わたしは北原白秋こそが、立花宗茂の最大のライバルだと思っています。
遠くない将来、西鉄柳川駅前の歓迎看板は「歓迎 十一万石の城下町、北原白秋のふるさと水郷柳川」となっているはず……
【ココまで知ればサラに面白い】
普段の解説ではたどりつけない、ココまで知ればサラに面白くなるのにと学芸員が思うところまで、フカボリして熱弁します。
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